わたしがブログを更新していない間に、公式からは「秘密のクローゼット」での初期設定資料公開や、フェニックスのシングルCD発売の発表など、色々動きがありましたね。
今日のテーマは「オトカドール」というタイトルについてです。Twitterの方では9月末にツイートしたものですが、少し情報量を増やしてまとめます。
オトカドールというタイトルは、「オトカ」と「ドール」に分けられます。まずは前半の「オトカ」についてみていきましょう。
オトカ(otoca)
オトカという言葉については、"オトメのカードで「オトカ」!"と公式サイトに書かれています。公式サイトより |
このように、複数の単語の一部ずつをとって組み合わせてできる語のことを「かばん語」、あるいは「混成語」と呼びます(英語で言うとportmanteauです)。“オトカ”は、日本語の「乙女」と英語「card」を組み合わせたかばん語というわけです。
このような造語をかばん語と呼ぶ理由は『鏡の国のアリス』にあります。
ハンプティ・ダンプティがアリスとの会話の中で、
"well, 'slithy' means 'lithe and slimy'. 'Lithe' is the same as 'active'. You see it's like a portmanteau―there are two meanings packed up into one word."
「うん、<しなねば>とは、<しなやかでねばっこい>ってこと。<しなやか>ってのは<活発>とおなじことさ。ま、旅行鞄みたいなものでね――ひとつのことばに二つの意味がつめこまれてるんだ」(矢川澄子 訳)
と言って、slithyという造語をportmanteauという鞄にたとえています。
ポートマントーという種類の旅行かばんは、両開きで真っ二つに開くことができるものだそうですが、現在ではほとんど使われないようです。英語版wikipediaのPortmanteau (disambiguation)のページでも、portmanteauの第一義はかばん語になっています。
余談になりますが、『鏡の国のアリス』はオトカドールも含む創作物に大きな影響を与えているのは御存知の通りですが、「かばん語」のように学術的な用語にも影響を与えています。「かばん語」は言語学の形態論の用語で、生物学には「赤の女王仮説」があります。
また、この語は日本語と英語という異なる種類の言語の単語が混ざっています。複数の言語の単語を混ぜて作られる造語は「混種語」と呼ばれます。
まとめると、「オトカ(otoca)」は「オトメ(otome)」と「カード(card)」のかばん語(混成語)で、日英の混種語である。ということになります。
ドール(d'or)
さて、後半の「ドール」にいきましょう。
あいさんを始めとするドールの英語表記は"doll"なのですが、ゲームタイトルの方は"D'or"です。カンヌ国際映画祭の最高賞である「パルム・ドール(Palme d'Or)」や、カネボウ化粧品の「コフレドール(COFFRET D'OR)」のドールと同じです。この"d'or"はフランス語で、"de or"の短縮形で、英語に逐語訳すれば"of gold"、つまり「金の」という意味です。
パルムドールは「金のシュロ」、コフレドールは「金の小箱」、そしてオトカドールは「金のオトカ」――。おそらく、"doll"のドールと、キラカードが作れることをかけてあるのでしょう。
ちなみに、この"d'or"という単語、英語版wiktionaryに英語として載っています。そこの引用文によると、エドガー・アラン・ポーなどが使ったようですよ。
まとめ
- オトカドール(Otoca D'or)は日英仏の混種語
- オトカはオトメ+カードからなるかばん語(混成語)
- ドール(d'or)はフランス語由来で、「金の」という意味(英語dollともかけている)
参考文献
- Lewis Carroll『Through The Looking-Glass』1872(引用は講談社英語文庫, 1993による)
- ルイス・キャロル,矢川澄子 訳『鏡の国のアリス』1994,新潮文庫
- 佐久間淳一,加藤重広,町田健『言語学入門』2004,研究社
- 寺澤盾『英語の歴史』2008,中公新書
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