2017年7月12日水曜日

フィクルさんについてのあれこれ(その2:スモールホワイト編)

前回の記事(→その1:妖精編)では、フィクルさんというキャラクターそのもの及びパピリオコーデに関する話を主にしましたが、今回はAct 2に登場する「スモールホワイト フィクル」さんの方の話をしていきます。




A small white

今回のフィクルさんの二つ名は「スモールホワイト」ですが、“small white”はモンシロチョウのことです(参考→Pieris rapae - Wikipedia)。そのままですね。ちなみに“large white”も存在し、こちらはオオモンシロチョウのことです。オオモンシロチョウはヨーロッパの蝶で、日本にはあまりいないようです。


bianca dance

コーデ名の「ビアンカダンス」ですが、これはイタリア語と英語の混合語と思われます。アルファベット表記をするならば“bianca dance”になるかと思います。“bianca”はイタリア語で、「白い」という意味の形容詞です。
イタリア語は名詞に性があり、形容詞も修飾する名詞の性・数によって変化します。“bianca”は女性・単数の形です。男性・単数の場合は“bianco”になります。ボンゴレ・ビアンコというパスタがありますね。ビアンコはトマトを使わない白いボンゴレで、トマトを使う赤いボンゴレはロッソです。今回のコーデ名では女性名詞にかかる形“bianca”になっていますが、これはフィクルさんが女性だからというのもあるのでしょうが、“dance”という英語に対応するイタリア語“danza”が女性名詞だから、というのもあるのかもしれません。試しにGoogle翻訳で“A white dance”を伊語訳したところ、“Una danza bianca”となりました。コーデ名がもし全部イタリア語であったならば、「ダンツァビアンカ」コーデという名前になりそうです。
妖精フィクルさんは全身アゲハチョウでしたが、今度は全身モンシロチョウです。

ビアンカダンスコーデのもちものやアクセサリーに使われている「ファルファーラ」,「ファルファーレ」ですが、これもイタリア語です。「蝶」を意味する“farfalla”, “farfalle”ですね。女性名詞で、前者が単数形、後者が複数形です。
タクトは1本ですし、ウィングは蝶1頭分なので単数形である「ファルファーラ」が使われ、ピアスは2つ1組なので複数形の「ファルファーレ」なのはわかります。
ですが、なぜトークハットも複数形なのでしょうか……? 少し調べてみましたが、わかりませんでした……。あのトークハット、よく見ると蝶が複数匹いるのでしょうか。


フィクル・キャンディッドと妖精の女王・月の女神

フィクルさんとキャンディッドさんは2度も同じ組み合わせでオトカまんが化されるなど、とても仲が良い様子です。実は、月と妖精には意外な関連性があります。
前回の記事でも紹介したシェイクスピアの『真夏の夜の夢』にはティターニアという名前の妖精の女王が登場します。このティターニアという名前に月が関係しています。

ギリシア神話の月の女神の1人にアルテミス(ローマ神話:ディアーナ)がいます。アルテミス(ディアーナ)はどうやらセレーネー(羅:ルーナ)との同一視によりティタン神族の一員として数えられることがあり、オウィディウスの『変身物語』においてディアーナはティタン神族の娘という意味で「ティターニア」とも呼ばれているそうです。
この『変身物語』はイギリスの文学等にも影響を与えているのですが、アルテミスが引き連れているニンフ達のことが「フェアリー」と英訳されたようで、イギリスにおいてアルテミスはフェアリー達の女王としてみなされたようです。フェアリーというのは日本語で「妖精」と言ったときに想像されるような小さな存在だけでなく、バンシーやケルピーのような妖怪めいた存在などまでも含む広い概念なので、そのように訳されたようです。
この「アルテミス=妖精の女王」という発想で、16世紀イギリスの詩人、エドマンド・スペンサーは『妖精の女王』という詩において、妖精の女王のことをシンシア(アルテミスの別名キュンティアの英語読み)とも呼んでいます。シェイクスピアも同じように、妖精の女王に月の女神の別名である「ティターニア」と名付けたのでした。
『真夏の夜の夢』はライカ第一弾のタイトルの元ネタにもなっており、オトカドールにある程度影響を与えていると思われます。そこに登場する妖精の女王がギリシア・ローマの月の女神の影響を受けている……。フィクルさんとキャンディッドさんの仲がいいのには、ひょっとするとそういう経緯も関係あるのかもしれませんね。


余談:変わる流行・変わらない中身

オトカまんが「移り気なアノ子」において、キャンディッドさんがフィクルさんに「変わる流行に中身は変わらないフィクル」と言っていますが、もしかしたらこれはココ・シャネルの“La mode se démode, le style jamais.”(流行は廃れるが、スタイルは永遠である)という言葉を元にしているのかもしれません。ひょっとすると、ですが……。

オトカミュージック「ブランニュー・ホワイト」の画像については元ネタを指摘されている方がいらっしゃいました。
『ティファニーで朝食を』ですね。フェニックスのお二人のソーレ・ルーナもイタリア語で、そのコーデはおそらく「ベネツィア・カーニバル」を意識していそうなので、オトカドールに一大イタリアブームが来ているようです。


参考文献


  • 井村君江『妖精の系譜』新書館、1998
  • 井村君江『妖精学入門』講談社現代新書、1998




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